小澤建築設計事務所 小澤和稔

北杜市武川町にある「小澤建築設計事務所」の代表を務める小澤和稔さんは、個人住宅をはじめ、小規模な改修から会社の社屋まで、幅広い規模の建築物の設計を手掛けている。

小澤さんがつくり出す、木の温もり溢れる開放的な空間は、建物の中に居ながらにして、まるで自然の中にいるような気持ちよさを感じることができる。

自然エネルギーの活用や人と人のつながりまで考え抜かれた今のような建築スタイルに辿り着くまでには、どのような経緯があったのだろう。

そして、「いつか建築を通して地元に貢献したい」と語る小澤さんが、生まれ育った武川町で、今後実現していきたいこととは?

設計をする上で大切にしていることを教えてください。

「内部と外部のつながりを大切にした設計を心がけています。例えばこの住宅の居間は、中庭に面する部分を全面ガラスとし、ウッドデッキと繋げて広がりを持たせていたり、開口部を効果的に配置して、景観の良い外部空間を取り込むような設計になっているんです。

広がりのある空間の方が心地よいと思うし、山梨はロケーションがいいところが多いので、そういった建築に適していると思います。また内部空間は完全に仕切るのではなく、窓越しにお互いの雰囲気が感じられるような、人と人の繋がりを大切にした空間づくりを意識しています。あとは、自然エネルギーを活かす工夫をしているというところもポイントです。」

自然エネルギーを活かす工夫とは?

「間取り、窓の位置・大きさ、断熱などの工夫によって、自然エネルギーをうまく取り込み、快適な室内環境をつくり出すことです。例えば、窓から入る太陽の日射熱をうまく取り込めば、冬場でも昼間は暖房がいらないくらい部屋を暖めることができます。このような工夫によって、なるべく省エネで、環境に優しい建築をつくることを心掛けています。」

いつ頃から、今のような建築スタイルを目指すようになったのですか?

「高校生の頃にテレビで、海外の自然エネルギーを活用した地球に優しい建築物が特集されていて、『建築ってこんなことができるんだ』と知ったことが、建築を学ぼうと思ったきっかけでした。緑に囲まれた武川町で生まれ育ち、自然を大切にしたいという想いがあったのと、もともとものづくりが好きだったこともあり、自分の想いを形にできる設計士という仕事を志しました。

とは言え、建築を学んでからしばらくは、真っ白でシンプルな建築や、安藤忠雄さんがつくるようなコンクリート打放しの建築などに憧れていました。今のような素朴な雰囲気が好きになったのは、山梨に戻って仕事をしていく中で、木の温かみや質感の良さに気付いてからですね。」

なぜ地元である北杜市に戻ることを選択したのですか?

「都会の雑踏が苦手で、もっとゆったり生活したいなと思いました。北杜市はやっぱり自然環境が素晴らしくて、観光地としての人気もありますし、いいものをたくさん持っている地域だと感じています。今あるものをうまく使って、この環境を持続できるような地域社会が実現できればいいなと思っています。」

そのために、小澤さんが今後取り組んでいきたいことはありますか?

「名だたる建築家たちは、単にかっこいい建築物をデザインするのではなく、都市や自然、そこに関わる人との関係性、社会問題まで考えて建築をデザインしています。自分も建築という仕事を通して、生まれ育った武川町の抱える問題に対して貢献していきたいと考えています。特に私の地元は人口が減っていて地域が成り立たなくなりつつあり、小学校の児童数も減っているなどという話を聞くと、10年、20年後にはどうなってしまうのだろうという危機感が常にあります。この武川町という地域は、ロケーションが良くて土地も安価であり、インフラやネット環境も悪くないので、場所を選ばす働けるような人などを工夫次第で呼べるのではないかと思っていて、例えば空き家がたくさんあるので、それらをうまく活用できる仕組みができればと考えています。発展は望んでいませんが、地域が持続していけるような仕組みづくりをして、家族や周りの人が幸せに暮らせる環境を守っていきたいです。」